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『藝人春秋』感想。今年ベスト

今年読んだ本ベスト1!

 

お笑い芸人浅草キッド水道橋博士こと小野正芳さんの新作。

内容紹介はアマゾンより

 

(内容紹介)

人気漫才コンビ・浅草キッドの一員であり、芸能界ルポライターをも自任する水道橋博士。現実という「この世」から飛び込んだ芸能界という「あの世」で二十数年を過ごす中で目撃した、巨星・名人・怪人たちの生き様を活写するのが『藝人春秋』です。 たけし軍団の先輩、そのまんま東が垣間見せた青臭すぎるロマンチシズムを描きだす。古舘伊知郎の失われた過激実況に、過激文体でオマージュを捧げる。苫米地英人湯浅卓の胡散臭すぎる天才伝説に惑乱させられる。稲川淳二が怪談芸を追い求める、あまりに悲劇的な真の理由に涙する。 爆笑問題草野仁石倉三郎テリー伊藤ポール牧、三又又三、ホリエモン……選りすぐりの濃厚な十五組。 中学時代の同級生・甲本ヒロトのロック愛に博士自らも原点を見出すエピソードは、感動的ですらあります。 そしてその原点・ビートたけし松本人志という、並び立たぬ二人の天才が互いへの思いを吐露した一瞬に見える、芸人の世界の業の深さよ。博士が「騙る」暑苦しく、バカバカしく、そして少し切ない彼らの姿からは、「父性」を乗り越えようとする男の哀しい物語が浮かび上がり、その刹那「藝人」は「文藝」をも超えてゆきます。 電子書籍で話題沸騰した作品を完全全面改稿・加筆し、博士生誕五十年を(自分で)記念する、渾身の一冊です。

 

 

お笑い芸人としての浅草キッドのことは全然知らないんだけど、水道橋博士の文章は大好きで、『お笑い 男の星座1』『お笑い 男の星座2』は今も元気のないときに読む。

男の星座シリーズを読んだときに感じたのは、この人は他人の面白い部分を見抜く天才だということ。そして彼が感じる面白さは、テレビの中という嘘が許される世界でもギリギリ見せていいかどうかの境界であるがゆえに他の芸人がいじれないところだ。そしてそのポイントをいじるプロであることに誇りを持ってる。

 

今回の本は彼が持つ他人の面白い部分を見抜く才能のさらにその理由を掘り下げていった結果、気づいたら私小説になってた、という本だ。

 

鬱屈した青春時代を過ごし、自分を一度殺して、たけし軍団という芸能界の戸塚ヨットスクールに入団、その後もたけしさんのような偉大な人物に憧れるが自分がそこにいくことはないと悟り、己の道を探し続ける男。自分が絶対にあこがれの人物にはなれないと分かっていてもそこに憧れる、近づきたい、そーいう思いが痛いほど伝わってくる名作。偉大な人間ってのは、自分が偉大な人間になれるかどーかなんて気にせず好きに生きている。多くの小市民は会社や世間や家族のしがらみに縛られているので、彼らに憧れねたむ。おれはどーするんだろう。28になって自分が天才でも唯一無二でもなんでもないことは分かってるけど、それを認めて小市民として生きていくには生意気すぎる。まだ、なんとかなるんじゃねえのか、大逆転はなくても頑張り続けたらまだやれるんじゃないっていうあがきを続けたい。

 

特集されている多くの芸人との思い出・インタビュー・後日談という構成から浮かび上がってくる彼の内面はとてつもなく鬱屈しているが、もがき続ける姿はとても美しい。

 

この本を読んでの自分の行動へのポイントは、おれもまた水道橋博士の用に自分以外の偉人に異常に憧れ、そうなれない自分に対して悔しい思いをし続けてるけどまだ諦めない。

やりたいことがあるならやってみなはれ。仕事やめたってしなんし、いきたいとこがあるならいこう。そして28にしていつ死ぬかわかんないんだから、他人から「いい人」だとか思われることをやめよう。思ったことを口に出す。納得いかないことには文句を言う。

 

オススメです。

 

藝人春秋 (文春文庫)

藝人春秋 (文春文庫)