ある病院で発生した感染症により発症したほぼ全ての患者が死亡する。3人だけ生き残った人たちには特殊能力が備わって…というお話。
感想の前提として僕にとって井上夢人さんは大好きな作家で、岡嶋二人時代からほぼ全ての作品を読んでいる。井上作品では、オルファクトグラムは本当に好きな作品だし、実質井上作品と言われているクラインの壷も好きだし、ある種アンフェアなクリスマスの4人すら気に入っている。その僕でもこの作品はちょっとがっかりした。
これは要するに過去の作品の焼き増しじゃないかよ。ひょんな事から超能力を得た主人公の話しってのはオルファクトグラムだし、中盤以降の展開はAKIRA的だし、ラストはデビルマンっぽい。そして一番の不満はかなりの分量の割に読んでる間中、これはおかしいだろというポイントが多いこと。少なくともおれが仲屋さんであればまずウイルスの出所を探すし、テレビで有名にならないし等々、全く納得ができない。小説の主人公がその物語上での設定で切れ者なのにとんちんかんなことばかりやっていると冷めてしまいます。
あと、なんと言っても唖然とさせられたのはラスト。もういい加減夢落ちはやめたらいいのに。今回の物語に希望を持たせる必要はあるのかなあ、まあこれは人の好き嫌いの問題かもしれないけど。あー大好きな作家さんだけに次回こそと期待しています。